剣道家の腰を守る!【垂(たれ)】の選び方とおすすめポイント
剣道の防具一式の中で、腰部や下腹部を守るのが「垂(たれ)」です。面や小手に比べると地味に感じられるかもしれませんが、試合の際の安定感や、打突の衝撃から腰部を守る上で非常に重要な役割を果たします。
特に、上達するにつれて打たれる頻度が増えるため、自分の体格や剣風に合った垂を選ぶことが、長く快適に稽古を続けるための鍵となります。
この章では、初心者から経験者まで満足できる、垂のおすすめの選び方と、価格帯ごとの特徴を解説します。
1. 垂選びの最重要ポイントは「刺し幅」と「素材」
垂を選ぶ際、最も注目すべきなのは「刺し幅(さしはば)」と、布団に使われている「素材」です。これらが、防御力、軽さ、価格を決定づけます。
(1)刺し幅(何ミリ刺し? 何分刺し?)
刺し幅は、ミシン刺しの場合は「〇〇ミリ刺し」、手刺しの場合は「〇〇分刺し(ぶざし)」という単位で表されます。この**数字が小さいほど、縫い目が細かく、防具が分厚く(または硬く)**なり、値段も上がります。
種類 | 特徴とメリット | おすすめの剣道家 |
【実戦型】4mm〜6mmミシン刺し | 軽さと動きやすさを重視した現代の主流。布団が薄めで、腰へのフィット感が高い。軽量で試合向き。 | 試合や大会に頻繁に出る、軽快な動きを求める経験者。 |
【稽古・入門型】7mm〜8mmミシン刺し | 刺し幅が広く、比較的安価で耐久性が高い。初心者や、打ちが強すぎない小・中学生の普段の稽古におすすめ。 | 剣道を始めたばかりの初心者、コスパを重視する方。 |
【高級】手刺し(1.0分〜2.0分) | 職人が手作業で刺すため、非常に高価。布団に適度なコシと柔らかさがあり、体になじみやすい。 | 昇段審査や高段者、長年愛用したい上級者。 |
(2)素材:見た目の高級感と耐久性を左右する
垂の素材は、見た目の印象だけでなく、使い心地や耐久性に大きく影響します。
素材 | 特徴とメリット |
織刺し(おりさし) | 紺の綿生地で、軽くて風通しが良い。乾きやすく、稽古量が多い方に人気です。近年は織刺しでも高級なモデルが増えています。 |
紺鹿革(こんしかがわ) | 鹿革を使用しており、高級感と耐久性は抜群。使い込むほどに風合いが出てきますが、価格は高めです。昇段審査など、見栄えを重視する場に最適です。 |
人工皮革(クラリーノなど) | 水や汗に強く、手入れが非常に楽で安価。耐久性も高いため、初めての防具や、汚れやすい少年剣士におすすめです。 |
2. 目的別!おすすめの垂の選び方ガイド
あなたの剣道ライフに合わせて、最適な垂のタイプを選びましょう。
タイプA:剣道を始めたばかりの初心者・少年剣士向け
最優先事項: 価格と耐久性。すぐにサイズが変わる可能性があるため、高価なものは避ける。
おすすめの仕様:
刺し幅: 7mm〜8mmミシン刺し(耐久性があり安価)
素材: 人工皮革(手入れが楽で丈夫)
価格帯: 1万円〜2万円台
選び方のヒント: 胴や面とセットになった防具セットで選ぶと、コスパが良いことが多いです。
タイプB:高校生〜一般の経験者・普段の稽古向け
最優先事項: 動きやすさと耐久性のバランス。日々の稽古で体に負担をかけない「軽量化」がカギ。
おすすめの仕様:
刺し幅: 6mmミシン刺し(軽量実戦型)
素材: 織刺し(軽くて乾きやすい)
価格帯: 2万円〜4万円台
選び方のヒント: **「タイトステッチ」や「フィットステッチ」**といった、腰へのフィット感を高める工夫が施されたモデルがおすすめです。
タイプC:試合・審査・高段者向け(高品質)
最優先事項: 最高の機能性と風格。見た目の美しさや、長時間の着用でも疲れないコシの強さ。
おすすめの仕様:
刺し幅: 4mmミシン刺し、または手刺し(1.5分〜2.0分)
素材: 紺鹿革、または高級織刺し
価格帯: 4万円〜10万円以上
選び方のヒント: 垂の段飾りの**「飾り糸」**が工夫されていたり、布団のコシの強さ(打たれた時の衝撃吸収性)にこだわっているモデルを選びましょう。
3. 垂ネーム(ゼッケン)の知識とマナー
垂の中心部分に取り付ける「垂ネーム(名札)」は、所属と氏名を示す剣道に不可欠なアイテムです。
垂ネームの基本ルール
位置: 垂の中央の**大垂(おおだれ)**に、袋状になった名札を差し込んで使用します。
記載内容: 上部に所属団体名(学校名や道場名)を横書き、中央に名字を縦書きするのが基本です。
書体と色: 読みやすい楷書体や行書体が推奨されます。生地は藍染紺反、文字は白が一般的です。(学校や団体で書体が指定されている場合があるため、必ず確認しましょう)
試合規定: 全日本剣道連盟の試合規定では、垂ネームの着用が義務付けられています。
ネーム選びの裏ワザ
稽古用と試合用を分ける: 普段の稽古用は安価で耐久性の高いクラリーノ素材、試合や審査用は風合いの良い正藍染の紺反を使用した**「武州正藍染」**のものを用意すると、長く美しい状態を保てます。
字体の確認: 特に旧字体を使用する場合は、誤字を防ぐためにも、防具店にしっかりと伝票などで確認してもらいましょう。
最適な垂を選ぶことは、あなたの剣道技術をサポートし、長く安全に稽古を続けるための土台となります。ご自身のレベルと目的に合わせて、後悔のない一着を見つけてください。