剣道用「垂」の選び方とおすすめ!初心者から上級者まで満足できるポイントを徹底解説
剣道防具の中でも、下腹部を守り、全体の**着姿(きすがた)**の印象を決める重要な役割を持つのが「垂(たれ)」です。面や小手ほど直接的な衝撃を受けませんが、着装の美しさ、動きやすさ、そして長持ちするかどうかが選ぶ際の大きなポイントとなります。
「どれを選べば良いか分からない」「長く使える良い垂が欲しい」とお悩みの方へ、剣道歴の長い先輩剣士の視点から、失敗しない垂の選び方とおすすめの基準をご紹介します。
1. 剣道の垂を選ぶ際に重視すべき3つのポイント
垂は、面や小手に比べて消耗が少ないため、一度良いものを選ぶと長く使い続けることができます。将来的なことも考え、以下の3点に注目して選びましょう。
1-1. 防御力と着装美を決める「芯材」と「布団の厚み」
垂は主に、腰に巻く**「腹帯(はらおび)」と、その下に垂れ下がる「大垂(おおだれ)」「小垂(こだれ)」**で構成されています。
要素 | 選ぶポイント | 理由・メリット |
芯材のしっかり感 | 適度な厚みとコシがあるもの | 防御力が高まり、打突が当たっても痛みが軽減されます。また、美しい型がつきやすく、着装が見栄え良くなります。 |
腹帯の柔らかさ | 締め付けすぎず体にフィットするもの | 腹帯が柔らかいと、腰骨に沿ってしっかり巻き付けられ、骨盤が安定します。これにより下腹部(丹田)に力が入りやすくなり、力強い発声や打突につながります。 |
1-2. 動きやすさを左右する「刺し幅(刺し方)」
垂の「布団(ふとん)」の刺し方(縫い方)は、動きやすさに直結します。
ミシン刺し(機械刺し):
特徴: 比較的安価で、耐久性が高いものが多く、初心者から幅広く使われています。
種類: 刺し幅(ミリ数)が広いほど(例:6mm刺、7mm刺)、柔らかく軽量になる傾向があり、体になじみやすくなります。
手刺し:
特徴: 非常に高価ですが、柔軟性に優れ、体に吸い付くようなフィット感と独特の風格があります。有段者や一生ものとして選ばれます。
近年は、ミシン刺しでも**「ナナメ刺し」や「具の目刺(ぐのめざし)」**など、手刺しに近い柔軟性と動きやすさを追求したモデルも増えており、実戦的な稽古にも最適です。
1-3. 見た目の風格と耐久性に関わる「飾り」と「ヘリ革」
面や小手と比べて、垂は「見た目の美しさ」が重要視されます。
飾り糸の本数: 大垂や小垂の縁に施される**飾り糸(山道飾り)**は、見た目の高級感や美しさを演出します。一般的には、本数が多いほど高級とされますが、完全に個人の好みで選んで問題ありません。
ヘリ(縁)の素材: 垂の縁を補強するヘリ革は、耐久性に大きく関わります。**紺革(鹿革)は高級で見た目の風格がありますが、手入れが楽で軽量なクラリーノ(人工皮革)**を選ぶのも賢明な選択です。
2. 目的別!おすすめの垂の選び方
剣道の習熟度や使用目的に合わせて、おすすめの垂の選び方をご紹介します。
2-1. 【初心者・学生】最初の垂におすすめの基準
入門時や成長期のお子様、コストを抑えたい方には、手入れのしやすさと耐久性を重視した垂がおすすめです。
予算の目安: 1万円〜2万円台
刺し幅: 6mm〜8mm程度のミシン刺し
適度な防御力と軽量さを兼ね備えており、稽古に集中しやすいバランスの良さがあります。
素材: 織刺(おりさし) または クラリーノ
織刺は軽くて乾きやすく、クラリーノは丈夫で手入れが簡単です。
2-2. 【一般・中級者】長く使える実戦型におすすめの基準
稽古量が多く、打たれ強さと動きやすさの両方を求める方、体格が安定した方には、機能性を追求したモデルがおすすめです。
予算の目安: 2万円〜4万円台
刺し幅: 5mm〜6mmピッチの具の目刺しやナナメ刺し
ミシン刺しの中でも布団が体になじみやすく、着装した際のシルエットが美しく整いやすい特徴があります。
着眼点: 大垂のクッション性(防御力強化)や、腹帯の柔らかさ(体へのフィット感)など、メーカー独自の工夫が施された垂を選ぶと満足度が高まります。
2-3. 【上級者・審査用】風格と美しさを追求した垂
長年の経験があり、着装の風格や美しさを最優先したい方、審査や重要な試合に臨む方におすすめです。
予算の目安: 5万円以上(手刺しはさらに高価)
種類: 手刺し(1.5分、2.0分など)
剣道の伝統的な美意識と、最高のフィット感、そして耐久性を備えています。
着眼点: 紺反(正藍染)の質感、紺鹿革などの高級素材が使われているか、職人による丁寧な仕立てがされているかなどを重視して選びましょう。
3. サイズ選びの最終確認と「垂ネーム」の重要性
垂は、面や小手ほど厳密なサイズ調整は不要ですが、正しいサイズを選ぶことで着姿が格段に良くなります。
3-1. 垂の正しいサイズの目安
垂のサイズは、**「大垂が腰骨よりも少し後ろにくるくらい」**が理想的です。
腹帯の長さ: 腹帯を巻いた際に、胴(胴着)の紐に隠れてしまい、垂の左右の大垂が正面から見てシンメトリー(左右対称)に見えるように調整できる長さが必要です。
大垂の幅: 大垂の端が、腕を自然に下ろした位置よりも少し外側に来ることで、末広がりの美しいシルエットになります。
購入前に、身長やウエストサイズを元に、メーカーのサイズ表をしっかり確認しましょう。
3-2. 垂ネーム(ゼッケン)を忘れずに
垂の中央の大垂には、所属団体名と氏名を記した**「垂ネーム(ゼッケン)」**をつけます。
共通性: 団体や学校によっては、垂ネームのサイズ、書体、生地の色が指定されている場合があります。必ず事前に確認してから製作を依頼しましょう。
素材: 正藍染の紺反生地にクラリーノ(合皮)や刺繍で文字を入れるのが一般的です。
垂ネームは防具の顔とも言える部分です。本体の垂と同時に準備し、美しい着姿で稽古に臨みましょう。